トリビア①
朝鮮時代の結婚適齢期は?
朝鮮では早婚が慣習化していたが、なかでも王子は跡継ぎに冊封されるとすぐさま世子嬪(将来の王妃)選別が行われ、10歳前後で婚姻するという早婚だった。世子嬪の条件は、両班の家柄で王子より2~3歳年上であること。そのため歴代王妃のほとんどが、“姉さん女房”だ。庶民でも、男子は14~15歳、女子は16~17歳がいわゆる結婚適齢期で、28歳まで独り身だったホンシムはオールドミスの極み。親が心配するのも納得なのだ。ちなみに、未婚の女性は髪を三つ編みにして垂らすスタイルで、髪飾り(テンギ)をつけるのが定番。
その髪を後ろで髷にすると既婚の印。ホンシムの髪型の変化にも注目を。
トリビア②
世子たるもののたしなみとは?
朝鮮王朝時代、王位継承者として認められると、いわゆる“帝王”教育がスタートした。世子には侍講官(シカングァン)と呼ばれる先生が24時間体制でつき、朝講、昼講、夕講と日に3回の講義を受けたほか、夜対と呼ばれる補習も行われた。5歳前後から字を習い、儒教でいう“君子の六芸”、①礼(道徳)②楽(音楽、詩歌、舞踏)③射(弓術)④御(乗馬)⑤書(文学、書法)⑥数(算術、数学)を身につけていく。劇中、ユルは「四書五経」をそらんじ、弓の腕を誇るなど、文武を究めた完璧男子ぶりを見せるが、王の世継ぎとしては当然のものなのだ。
トリビア③
ユルの好物は?王族お食事事情
王や世子など王族の食事は、宮廷用語で「水刺床(スラサン)」といい、惣菜の数は12品、もしくはそれ以上とされていた。料理には各地方から上納された食材が使われ、食膳を通じて収穫状況を確認し、民の現状を知る目的もあった。ちなみに、ユルの好物として登場する「肉煎(ユクチョン)」は牛肉のチヂミで、祝い事の席などで出される伝統料理だ。1話ではユルが官僚たちに“バラ水”を振舞うが、これは甘みをつけた「五味子(オミジャ)」に果物や花びらを浮かべた冷たいデザート飲料「ファチェ(花菜)」。疲労回復や美容などの効能があり、健康飲料としても古くから飲まれていた。また、ウォンドゥクになったのち彼が飲みたがる「梨熟(ペスク)」は、梨の生姜シロップ煮。朝鮮王朝時代は、宮中でしか食べられなかった特別なものだ。
トリビア④
上流階級「両班」と庶子の事情
儒教思想により厳しい身分制度があった朝鮮王朝時代。官職を独占した支配階級「両班(ヤンバン)」は、目の前を通るだけで庶民は頭を下げなくてはならないほど身分差があり、“平民”のウォンドゥクが皆から「両班のような話し方」を注意されるのも当然。「両班は箸と本より重いものは持たない」と言われるなど肉体労働とは縁遠く、ウォンドゥクが水がめを持てないのも頷ける。また、父親が両班であっても、チェユンのように庶子(非嫡出子)の場合、たとえ能力があったとしても与えられる役職に制限があり、下級役人止まりだった。ちなみに、チェユンは首都行政機関である漢城府(ハンソンブ)の役人で、官位は「従7品」。18官位ある中で14番目の階級に当たり、たとえて言えば都庁職員で係長クラス。
時代劇用語
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左相(左議政)
キム・チャオンの役職で、朝鮮王朝時代の内閣府にあたる「議政府(ウィジョンプ)」のトップ3の1人。副首相、副長官といった立ち位置で、国の政治を仕切り、大きな権力を持っていた。
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内禁衛(ネグミ)
王の親衛隊。ユルが失踪したときもチャオンは内禁衛に捜索を命じている。ちなみに、ホンシムの亡父は「内禁衛将」だった。
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東宮(トングン)
世子が住む宮殿。世子に対する敬称としても使われる。
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令監(ヨンガム)
上級官僚に対する尊称。最上クラスが「大監(テガン)」、その次のクラスが「令監」と呼ばれた。
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県監(ヒョンガム)
地方の行政区画「県」を治める官職。地方官の中ではもっとも低い階級にあたり、劇中チェユンが任じられている。
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観察使(クァンチョルサ)
全国8つに分けられた行政区間「道」に中央から派遣される高官。各道の地方官の監督役も務めた。
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小学(ソハク)
儒教を学ぶ子供たちのために編集された初等教科書。幼少期、ユルは初恋のイソに感化されて、これを必死で学んだ。
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宮衙(クァンア)
地方の官庁。ホンシムとウォンドゥクの結婚式もここで行われた。
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衙前(アジョン)
官僚の下で末端の地方行政実務を担当した下級役人。
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暗行御史(アメンオサ)
地方官の不正を内偵する王直属の特命捜査官。劇中、
ホンシムは同じ宿に泊まっていた男を暗行御史と気づくが、通常は徹底して正体を隠し任務を遂行していた。